■6月19日放送回はオープニング映像をカット
自分の死を悟った嵩(北村)は、幼少期に家族みんなで食べたあんぱんがまた食べたいと清(二宮)に言い、「僕はもうすぐ餓死すると思うけど、(海軍に行った弟の)千尋(中沢元紀/25)は名誉の戦死をするのかな……?」と、問いかける。
すると、清は「バカなことを言うな。こんなくだらん戦争で、大切な息子たちを死なせてたまるか」と、目に怒りと悲しみを滲ませながら言い放つ。そのうえで、人間はみじめでくだらない戦争を引き起こすこともあるが、「美しいものを作ることもできる。人は人を助け、喜ばせることもできる」と、嵩に語りかける。
そして、嵩が現地民の信頼を得るために作った紙芝居を「みんな喜んでくれてたじゃないか」と褒めて、
「お前は何ひとつ無駄なことはやってはいない。いいか嵩、お前は……父さんのぶんも生きて、みんなが喜べるものを作るんだ。何十年かかったっていい。あきらめずに、作りつづけるんだ」
と伝え、去って行く。そして、嵩は救護室で目を覚ました――という場面が描かれたのだ。
妻夫木と二宮の感情が入った圧倒的な演技、それを受け止める北村に、視聴者は沸騰。
《北村匠海VS妻夫木聡 北村匠海VS二宮和也 で一瞬も目が離せなかった朝ドラタイム》
《クールな八木上等兵の妻夫木聡が感情をスパークさせたシーンも涙なしでは見られない》
《父ニノが嵩と家族らしい時間を過ごしたのはわずかなのに、さすがの演技だな…ここでニノを起用してくるとは》
《清パパの丸眼鏡の奥、目に涙がジワジワと溢れてくるのがもう》
《父さんニノ!また会えた!丸いメガネやっぱり似合ってるわ》
《魂の会話だった。(二宮の出演は)銀座であんぱん食べるシーンだけじゃなかったのね(略)ニノの演技が見れたのも感激朝ドラ史に残る名シーンだと思う》
と、絶賛する声、“泣けた”という声が多く寄せられることになった。
「妻夫木さんの『あんぱん』出演は、同作の制作統括を務める倉崎憲チーフプロデューサーの熱烈なオファーで実現しました。倉崎氏は5月20日配信の『ダイヤモンドオンライン』のインタビューで妻夫木さんが戦争パートで見せた芝居を《朝ドラでも『あんぱん』でもない、映画じゃないかというくらいすごいことになっています》としていましたが、まさにその通りでしたね。
一方、二宮さんは、近年ではTBS日曜劇場『マイファミリー』(22年4月期)で“娘を誘拐された父”を演じるなど、父親を演じる機会が増えていますよね。『あんぱん』では本編前に亡くなっている設定ですが、今回のわずかな出番でも“嵩の父親”という説得力は凄まじかった。
そして彼らより若いですが、やはり主演作品も多い北村さんが、その2人の凄い演技を受け止めたと。映画で主演を張るようなトップ俳優3人が、同じ回に、重要な場面で凄い演技を繰り広げ、わずか15分に凝縮された圧巻クオリティに視聴者が驚きの声を上げた、ということですね」(前出のテレビ誌編集者)
今回の『あんぱん』はオープニング映像をカットし、15分の放送枠を全部ドラマパートに使う異例の構成で放送された。この理由を倉崎氏は「やはり現場で生まれる化学反応があり、“間”も含めてなるべく現場で起きているリアルなこと、言葉をカットせずにありのまま放送に出したかった」「タイトルバックの74秒を、この回はどうしても台本を超えて現場で生まれたものに使いたく」と、同日配信の『スポニチアネックス』で説明している。
《今日の「あんぱん」は神回》といった声も多く上がっている朝ドラ『あんぱん』。酷く、むごい戦争編は、もうすぐ終わる。