■大手企業にも広がる現金回帰
現金回帰の動きは大手にも広がっています。ファミリーマートの一部店舗では「現金・ファミペイでのお支払いをお願いできれば幸いです」とのステッカーが掲示され話題に。ファミペイなら手数料が抑えられ、店舗側にも消費者にもメリットがあります。
とはいえ、全国的に現金回帰が進むとは限りません。都市部ではキャッシュレスの利便性やデータ活用が評価され、導入がさらに進むでしょう。一方、地方の小規模店では現金の利点が再評価され、二極化が進むと見られます。
2024年のキャッシュレス比率は42.8%と政府目標の「4割」を突破しましたが、次の目標は「8割」です。ただ現場からは「手数料が厳しい」との声も上がっており、万能な解決策とはいえないのが現実です。
「ネットに書きたくない名店って、現金のみのところが多いよね」という声もあり、現金だからこそ静かに営業を続けられる店もあります。
さらに、観光地では外国人観光客が多く訪れる一方、現金しか使えない店舗も少なくありません。結果として、「日本は先進国なのに現金文化が残っていて驚いた」といった声が海外から上がるケースもあります。観光客にとっては不便な側面がある一方で、現金主義を貫くことで地元との接点やコミュニケーションが生まれるという側面もあります。
キャッシュレスと現金、どちらが正解というより、それぞれの店舗に適した選択が求められる時代が始まっているようです。
戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。