日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。現代のサラリーマンの働き方に、昭和じゃ考えられない変化があるようで……。
かつて「24時間戦えますか?」というキャッチフレーズが流行語になるほど、日本のビジネスパーソンは“企業戦士”として知られていました。しかし、令和の時代において、特に若い世代を中心に注目を集めているのが「静かな退職(クワイエット・クイッティング)」という働き方です。
これは実際に会社を辞めるのではなく、出世や余計な業務を求めず、自分の仕事の範囲を厳密に守りながら、ワークライフバランスを重視する姿勢を意味します。
6月4日、人事領域で企業の成長を支援する株式会社コーナーが発表した調査によると、従業員100名以上の企業に勤める正社員413名のうち、約4割が「静かな退職」状態にあることが明らかになりました。
「今回の調査によると、20代はZ世代らしく、評価よりも心理的安全性を求める傾向が強く、社内コミュニケーションの煩わしさより、自分の時間を確保できるかを重視しています。
30〜40代はライフステージの変化や昇進ラインに対する不透明感に不満を持ち、50代は企業のトップダウン型体制に対する諦念がにじみ出ています。さらにコロナ禍を経て、どの世代も働くことそのものの意味を見直すようになり、単なる待遇だけでは動かない価値観が根づき始めているように見えます」(全国紙社会部記者)
実際、中高年世代は「頑張って成果を出しても、部下の評価、出世に繋がらず、上司と上司のお気に入りだけが評価されます。自分の努力も全て他人の成果に変わってしまう」(40代会社員)、「30年間、低賃金で働かされたのに、今さら忠誠心を求められても困る」(50代会社員)など報われなかった虚しさが要因となっている一方で、若者世代からは「残業代よりも家族と過ごす時間のほうが大事」(30代会社員)、「仕事に燃え尽きるより、長く働き続けられるスタイルがいい」(20代営業職)といった声が聞かれ、自分のペースを守る働き方が合理的であるとの考え方が「静かな退職」を後押ししているようです。