■何もないようでいろいろある
視聴者のX上の反響は、《正直、歳をとることは怖い。大人になればなるほど怖いものが増える。なのに気軽に寂しいって言えなくなる。けど、このドラマはそんな大人の想いも全て包み込んでくれるような安心感と温かさがある》など、祥子への誤爆メッセージや、エッセイを褒められた典子(飯島直子/57)など、加齢の描き方に多くの称賛の声が寄せられていた。
今回も、50代~60代が生きていくうえでの現実が、淡々と描かれていた。ただ、若いえりなの巣立ちも描くことで、型にとらわれない生き方を提示し、未来への明るい希望も感じさせる構成となっていた。シニア同士の輪の中だけでは終わらない、脚本家・岡田惠和氏の人生の描き方のバランス感覚はさすがだ。
大きな事件は起きないが、日常の小さな喜びや波乱は絶えず起きていて、登場人物たちは、それを柔軟に受け入れている。何事もないように見えるが、恋愛や家族関係、仕事関係などで起きていることは、とてつもなくリアルで、だからこそ、幅広い年齢層の視聴者から支持を得ているのだろう。
この流れからいくと、最終回も、何も起こらないように見える終わり方になりそうだ。予告動画には、「11年前のプロポーズの答えは?」というテロップが流れ、和平が酔っ払って千明にプロポーズをしたことを蒸し返していたが、これはファンへのサービス演出だろう。最終回も淡々と、しかし、小さなリアルが心にしみるストーリーが展開されるはずだ。
50代~60代の人生模様という、これまでドラマでは描かれなかった、新しい景色を見せてくれた本作。ここまで来たら、60代~70代編となるであろう、第4期も見たくなる。何も起きないけれど、とてつもなく新しいドラマになるはずなので、各キャラと一緒に年齢を重ねている、主要キャスト陣の健康を祈りたい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。