相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。
元横綱・白鵬の日本相撲協会退職を受けて開かれた6月9日の記者会見は、日本中の話題になった。
優勝45回、63連勝など、数々の記録に彩られた69代横綱。ところが、引き継いだ宮城野部屋が閉鎖に。それから1年がたっても再興のメドが立たないことで、白鵬も、いろんな意味で不満があったことだろう。
世間的には、「白鵬は相撲協会からイジメられてかわいそう」というものが多かった。視聴者は白鵬の口から、どんな不服や悪口が飛び出すのか、関心を寄せてテレビを見ていたと思う。
ところが、白鵬から不満や不服は出てくるどころか、スッキリした顔で、「今後は新たな夢に向かって進み出す予定。(相撲協会の)外の立場から相撲の発展に力を尽くしたい」と、世界中に相撲を広げる「世界相撲グランドスラム構想」を立ち上げたのだから、追い出される悔しさで涙でも見せるんじゃないかと思っていた視聴者には、ドッチらけだったんじゃないかな(笑)。
また、「相撲をオリンピック競技にすること」が目標だというから、夢はデカイ。
プロジェクト推進のために、新会社を立ち上げることも表明した白鵬が余裕の表情を見せているのは、彼に付いているタニマチ(スポンサー)が太いからだ。
一番太いのは、トヨタ自動車会長の豊田章男さんだろう。豊田会長は宮城野部屋の名古屋宿舎を全面的にバックアップ。さらに、優勝パレードに使う車を相撲協会に贈呈するなど、相撲に関する貢献度がスゴイ。
その他にも大塚製薬やパチンコのSANKYOなど、白鵬をバックアップする企業や個人はたくさんいる。つまり、資金力はタンマリあるということだ。