■「低セキュリティ」な刑務所生活の実態
アメリカの刑務所は、警備の厳しさによって「最小限(minimum)」「低(low)」「中(medium)」「高(high)」「最高(supermax)」、そして「行政(Administrative)」と複数のレベルに分けられている。
「どのレベルの刑務所に収監されるかは、犯罪歴や犯罪の内容などによります。ミニマムやローは非暴力、つまり詐欺や脱税、汚職などの犯罪者が送られるところ。いわゆるホワイトカラー犯罪のケースですね。警備のレベルで何が違うかというと、受刑者に与えられる自由度に大きな差があります。たとえば組織犯罪がらみの殺人や暴力などの犯罪は高セキュリティの刑務所に収監され、監視の目も厳格ですが、低セキュリティの刑務所だと、日本人が想像する以上に自由があります。
たとえば日本の刑務所で懲役となると、基本的に与えられたものを食べて作業をこなす、という繰り返しの日々を送ることになります。作業中会話はしていけないし、娯楽も少ないなど、自分で判断して行動する自由はありません。それでは自分で生活する能力が育たず、刑務所から出た時に社会適応できなくなるということで、今は社会復帰にむけた場所に変えようという動きがあります。一方、アメリカでは、一部の刑務所ではあるものの、低セキュリティの刑務所では社会復帰に向けた取り組みが行われていて、本人の希望次第でギャンブル依存症回復のプログラムを受けることも可能。会話も自由だし、ある程度日常的な生活を送ることができると思います」
食生活は連邦刑務所局が公開している“ナショナルメニュー”に従い、それによれば朝食はフルーツ、オートミール、シリアル、パンケーキ、トーストが基本。昼食はサンドイッチやハンバーガー、パスタ、魚、チキンなど。夕食はステーキ、ソーセージ、チャーハン、ローストビーフ等々となっており、かなり“日常生活”に近いメニュー内容だ。さらに米ニュースサイト「TMZスポーツ」によればテレビも視聴できるという。日本の刑務所とは随分と事情が異なることがうかがえる。
連邦検察によると、米国籍を持たない水原受刑者は服役を終了後は日本に強制送還される見通しだが、アメリカで生活し続けられる可能性はないのか。
「連邦刑務所の場合、弁護士がコンサルタントとして、早期に仮釈放してもらえるよう当局に働きかけてくれるサービスがあります。刑務所内での過ごし方や仮釈放支援などこまごまとしたサービスメニューがあり、フルサービスだと1万ドルぐらいの料金設定です。
また水原受刑者の場合、出所しても家族がいるアメリカでの生活のほうがある意味社会復帰に適しているという見方はあるでしょうが、とはいえアメリカで犯罪をして損害を与えているわけですから、少なくとも現政権下では退去強制(強制送還)の可能性が高いのではないでしょうか。退去強制されたらアメリカへの再入国は相当難しく、日本で頑張って働くしかありません」
水原受刑者が収監されたのは、奇しくも大谷が633日ぶりの投手復帰を果たした日だった。刑務所のテレビでは大谷の試合が放送される可能性もあるだろうが、いったいどんな心境でそれを見つめるのか。