キツイ・汚い・危険――ひと昔前は3K職場のイメージも強かった遠洋マグロ漁だが、実は近年、若者たちの間で志望する声が高まっているという。
「洋上でもネットが使えたり、1人1人に船室が用意されていたりと、労働環境が整い、稼げるとあって若者に人気なんです。数十年前の状況とは大きく変わりましたね」(地方紙記者)
今から30年前、17歳にしてマグロ漁船に乗り込み、2022年には『借金を返すためにマグロ漁船に乗っていました』(彩図社)を上梓した菊地誠壱氏に、当時の実態を取材した。
「きっかけは、親がアワビ養殖事業の失敗で5000万を借金したことと、素行不良で私が高校を停学になったタイミングが重なったことでした。当時、体一つで稼げる仕事といえば、マグロ漁船でしたから」
具体的な仕事のイメージも湧かないうちに、船に乗り込んだという菊地氏。その労働環境は想像を絶する過酷さだったという。
「朝は早い時で4時起き。延縄といって、150キロ以上の長さの縄にエサをつけて海に仕掛ける。それが昼まで続いて、その後は逆に、縄を揚げる作業。12時間ぶっ通しのときもありました」(前同=以下、菊地氏)
ときには100キロ超のマグロやサメが揚がったり、数時間しか寝られなかったりとハードな日々。
「キツい〝1か月航海〟でもらえた給料は22万円程度。そこから、航海の準備金が引かれ、さらに船主に納めるお金(給与の2割)が引かれ、最終的な手取りは8万8000円。新人の稼ぎは微々たるものでした」
ただ、一人前と認められると状況が好転したという。
「3回目の航海からようやく認められ、1か月航海の手取りで15万円。4か月航海では152万円稼げるようになりました」
船に乗っている間の出費はゼロ。10代で月に数十万の貯金ができるというのは、夢があるだろう。