■妻夫木と二宮の熱演が『あんぱん』最高視聴率につながったか

 戦時中、嵩(北村)がいる小倉連隊は、中国・福建省での任務に就いていた。軍は「占領地良民を己が同胞と心得」などと掲げていたが、岩男が死んだのは、彼が過去のゲリラ討伐の任務で現地の少年・リン(渋谷そらじ/7)の両親を射殺していて、その復讐でリンに撃たれたから。

 背景を説明した八木(妻夫木)は嵩を壁に押しつけ、「戦場で生き残るには、卑怯者になることだと言ったのを覚えてるか。卑怯者は、忘れることができる。だが、卑怯者でない奴は、決して忘れられない! おまえはどっちだ。どっちなんだ! どっちなんだ……」と、普段の冷静さを失い、悲痛な声でやり場のない怒りを爆発させる――というシーンが描かれた。

 そして、二宮の演技。同回では食糧難による“飢えの苦しみ”がじっくりと描かれていて、嵩も重度の栄養失調で倒れてしまう。そして、意識を失った嵩の前に現われたのが、幼少期に亡くなった父・清(二宮)だった。人間は戦争を引き起こすが、同時に美しいものを作ることのできると嵩を激励。嵩が現地民の信頼を得るために作った紙芝居を「みんな喜んでくれてたじゃないか」と褒めて、

「お前は何ひとつ無駄なことはやってはいない。いいか嵩、お前は……父さんのぶんも生きて、みんなが喜べるものを作るんだ。何十年かかったっていい。あきらめずに、作りつづけるんだ」

 と、伝えて去っていく――というシーンがおよそ4分半にわたり描かれ、嵩視点での戦争編は19日放送回で終了した。

 翌20日放送回では、高知が大空襲に見舞われ、のぶが焼野原となった街を呆然と見つめる、というやはり重い話が描かれた。

「『あんぱん』はスタート時から人気のある作品でしたが、妻夫木さんと二宮さんが素晴らしい演技を見せたことで、これまで以上に注目を集めたのは間違いないでしょう。それで同ドラマに興味を抱く人が増え、翌20日放送回をより多くの人が視聴。それにより、番組最高視聴率となったということではないでしょうか。

 今後も、ここぞという回で二宮さん演じる清が再び夢枕に立つこともあるかもしれないし、妻夫木さん演じる八木は戦後に再登場することが公式に明言されています。彼らが再登場したらまたSNSは沸騰するでしょうから、その翌日に放送される『あんぱん』も高視聴率となりそうですね。

『あんぱん』は前期の朝ドラ『おむすび』と比べてクオリティの高さが言われ、視聴率も良かったですが、視聴者離れが心配された戦争編でさらに勢いが増した感もある。今後より、話題になっていきそうです」(前出のテレビ誌編集者)

 番組公式サイトでは、妻夫木演じる八木のキャラについて、《戦後、嵩と思わぬ再会を果たし、朝田のぶ(今田美桜)と嵩の人生に大きな影響を与えるようになる》という一文がある。

 戦時中には、嵩が井伏鱒二の詩集を愛読していたことから「同じ匂い」を感じ、理不尽な暴力を受けないように手を回してくれていた八木。戦後も、嵩を導いてくれそうだ――。