日々、若者文化や社会問題を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏。そんな戸田氏が今、注目するのは訪日外国人の意外な訪問先だった。
日本を訪れる外国人観光客の間で、スーパーマーケットが“観光地”として注目を集めています。かつては観光といえば、寺社や温泉、テーマパークなどが定番でしたが、近年では日本の「日常」を体験できる場所への関心が高まり、スーパー巡りが新しい旅のスタイルとして浮上しているようです。
この現象は「スーパーマーケット・ツーリズム」とも呼ばれ、現地の食文化やライフスタイルを肌で感じることができる体験として定着しつつあります。実際、東京・銀座にある大手ディスカウント系スーパーでは、観光客と見られる人々が買い物かごを手に、さまざまな商品を吟味する姿が日常的に見られます。南米からの旅行者には抹茶パウダーがお土産として人気。買い物かごからあふれんばかりにグミを詰め込んでいる人も。ヨーロッパの一部地域では泡立つ網状スポンジがあまり流通していないことから、日本製スポンジの機能性に驚く声も上がっているようです。
また、日本独自の調味料も注目のアイテムに。ふりかけはその代表例で、近年ではSNSを通じてその用途が拡大しています。ご飯にかけるという日本の本来の食べ方だけでなく、ポテトやパスタに振りかけるという独自のアレンジが広がっており、「ふりかけ=調味料」という再定義が起きているようです。
東京・渋谷のあるスーパーマーケットでは、ランチタイムになると利用者の7割以上が外国人観光客や在住者で占められているとされていますが、彼らが手に取るのは、巻き寿司、マカロニサラダ、鶏肉の黒酢和え弁当などの惣菜類。中でも弁当の人気は高く、彩りや食材の豊富さ、価格の安さが評価されています。
「日本のスーパーマーケットには、その土地ならではの商品が集まりやすいため、観光客にとっては“日常に入り込む体験”として非常に魅力的で、しかも手軽にその文化の一端に触れられる。スーパーは観光と消費の両方を兼ね備えた絶好の場所になっているのです」(生活情報サイト編集者)