■「ハッケヨイ」はヘブライ語だった!?

 相撲とヘブライ語の共通点は他にもあります。例えば、相撲の行司のかけ声の、「はっけよい のこった」です。

 由来については諸説ありますが、「はっけよい」は中国語の“八卦”から、「のこった」は、そのままの意味で、“(土俵に)残った”から来ていると一般的には考えられています。

 ただ、この言葉も、ヘブライ語に照らし合わせると、「ハッケ」と「ヨイ」は“やっつける”、「ノコッタ」は“あなたを打ち倒す”という意味になるそうです。つまり、「やっつけろ! 打ち倒せ!」という戦いの開始の合図なんですね。

 はたして、これら不思議な一致は、偶然なんでしょうか。それとも、必然なんでしょうか。

 近年、「日ユ同祖論」すなわち、日本人とユダヤ人は共通の祖先を持っているという仮説が注目を集めています。今回、ご紹介したような言葉のつながりから、神社仏閣、お祭りをはじめとする風習や儀礼の類似点など、多くの共通点が指摘されているのです。

 それが事実か否か。まだまだ議論の段階ですが、私は、相撲という言葉の成り立ちを考えると、日本の文化の奥底に、遠く離れた地の記憶が静かに息づいているそんなふうに思うんです。次回は、さらに深く、日ユ同祖論に踏み込んで考えたいと思います。

貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年8月12日、東京都生まれ。88年、藤島部屋に入門。92年の初場所で、史上最年少の19歳5か月で幕内初優勝。兄・若乃花と「若貴フィーバー」を巻き起こす。94年11月に第65代横綱に昇進。幕内優勝22回。生涯戦歴は794勝で、「平成の大横綱」と呼ばれた。2018年に日本相撲協会を退職し、現在はテレビ、講演会等、幅広く活躍中。