横綱、親方として、相撲を通じて日本文化や神事に長らく関わってきた貴乃花。自身が体験したことや、本を読んで学んだこと、そして、心に残った“ニッポンの魅力”を、歴史の話も交えながら伝えていく。
皆さん、「相撲は、実はヘブライ語だった」という説を知っていますか?
ヘブライ語は、古代からイスラエルの人々が使う言葉。一方、相撲は、日本古来の文化です。両者は一見、何も関係がないように思えます。しかし、その語源をたどると、思わぬ共通点が見えてくるんです。
「すもう」という言葉は、一般的には“争う”という意味の古語「すまふ」の連用形、「すまひ」が名詞化したものといわれています。これが「相舞」や「素舞」といった漢字で表記されるようになり、のちに、“力くらべ”を意味する漢語「相撲」に、「すまひ」という読み方があてられたと考えられています。
公式の記録では、奈良・平安時代に行われた、宮中で天皇が相撲を観覧する行事「すまひの相撲せちえ節会」が有名です。734年(天平6年)、聖武天皇の勅命で全国の相撲人が招集され、七夕祭りの余興として開かれたのが最初の記録で、その後、400年ほど続き、高倉天皇の1174年(承安4年)を最後に途絶えました。