■キャバレー営業で一晩100万円!

 現役力士でありながら、プロ歌手でもあった。『そんな女のひとりごと』(1977年発売)のレコードは、実は小学生の頃、オレも買った(笑)。当時はキャバレーが全盛期。キャバレーに呼ばれて、数曲歌って、1晩100万円とか稼いじゃうんだから、すごいよね。

 プロ歌手というのは、歌がうまいとか、うまくないとかいうレベルじゃない。声の出し方、ムードが違う。そして「味」があるのが、増位山さんだった。油絵や写真も玄人はだしだったから、「相撲は趣味みたいなもの」とかつて語っていたのにも、納得できる。

 実は、お父さんの初代増位山さんは兵庫県印南郡(現・姫路市)出身。だから、当時の三保ヶ関部屋には兵庫県出身の力士が多かった。

 初代は兵庫県出身者として、初めて1949年夏場所で優勝しているのだが、2人目がオレ(2000年春場所)。そして3人目が元大関・貴景勝(現・湊川親方=2018年九州場所など)というところにも、縁を感じる。

 もう一度、あの美声を聴きたかった。

撮影/小島愛子

貴闘力(たかとうりき)
1967年9月28日、兵庫県生まれ。二子山部屋(入門時は藤島部屋)入門後、83年に初土俵。最高位は東関脇。2000年に幕尻(前頭14枚目)で初優勝する。02年に引退し、大鵬部屋の部屋付き親方となるが10年に野球賭博関与のため日本相撲協会を解雇される。現在は焼肉店『ドラゴ』を経営。