■日本でも身長ビジネスが流行する!?
こうした現象は日本も無関係ではありません。SNSや検索エンジン広告を通じ、「身長を伸ばす注射」を謳うクリニック情報が日本でも拡散中です。2024年8月には日本小児内分泌学会と日本内分泌学会が「成長ホルモンの適正使用に関する見解」を改訂し、承認外の使用に懸念を表明。特に、健常な子どもへの投与は効果が期待できず、副作用のリスクがあると明記されています。
本来の医療目的ではなく、身体的性能や見た目向上を目的とする「エンハンスメント医療」は、美容医療やドーピングに近い概念で、倫理的問題も孕んでいます。また、韓国では、SAGhE研究というフランス発の調査で、がん経験者や成長障害のある人が成長ホルモンを使うと、がんリスクが上昇するという結果も報告されています。
ネット上でも韓国の身長ビジネスについては、「これは大人の責任」「日本も同じ道を辿らないで」「効果が曖昧な薬を高額で売るのは倫理的に疑問」といった声も。確かに、外見偏重の価値観が過度になると、多様性を否定し、自己肯定感を損なう恐れがあります。
「『背が高い=成功』という価値観が子どもたちを追い詰める構図になっていないか、慎重に考える必要があります。医療が美容やスペック競争に飲み込まれると、副作用への警戒が薄れがちです。特に日本では韓国文化やKーPOPの影響が強いため、こうした価値観が無自覚に広がる可能性があります。だからこそ、大人が冷静に線引きし、必要な情報を子どもに伝える責任があるように思います」(医療ジャーナリスト)
自己肯定感を守り、多様な価値観を育むためにも、私たちは“本当に伸ばすべきもの”が何か、いま一度考える必要があるのではないでしょうか。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。