日本競馬界のレジェンド・武豊が名勝負の舞台裏を明かすコラム。ここでしか読めない勝負師の哲学に迫ろう。

 ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が、ファン投票数396万7668という圧倒的なリーグ最多得票で、7月15日(日本時間16日)アトランタ・ブレーブスの本拠地トゥルイスト・パークで開催されるMLBオールスター2025出場を決めました。

 レース当日はもちろん、平日も調教や交流競走があり、テレビで試合観戦する機会がなかなかありませんが、同じ日本人として応援しています。それと同時に、‟あまりに完璧すぎてちょっとずるいよな”とも思います。ひと言で言うと……かっこよすぎですよね(笑)。

 打っても投げても超一流。同じ男として、ちょっぴり妬けてしまいますが、そんな大谷選手から刺激をもらって臨んだ6月最終週の函館競馬は、6月28、29日ともに青空が広がり、最高気温が25度前後という初夏にふさわしい爽やかな風の下で行われました。

 最初の騎乗機会は28日函館の1R3歳未勝利戦。パートナーは、7戦目で初勝利を狙うオーケーダイナです。道中5番手から直線で前を捕えると、後続を抑え切って会心のV。先頭打者ホームランの気分です。

 これで勢いに乗り、続く2R3歳未勝利は、ケイアイワイラーパは、やりたい競馬をできた結果の2着。競馬学校同期、エビちゃん(蛯名正義厩舎)が管理するデルマアポロニアと挑んだ3R3歳未勝利は、3角過ぎからスピードアップ。ゴーサインを出してからの反応が抜群で、この日、2つ目の白星です。

 さらに勢いを増して臨んだ4R3歳未勝利の相棒は、栗東・清水久詞厩舎の馬で、キタサンブラックの半弟となるアルマデオロ。

‟スタートで、うまく出てくれれば——”

 ゲートの中で考えていたのは、それだけです。

 その思いが通じたのか、ポンと出たアロマデオロは、うまく流れに乗り、4コーナーで上昇開始。最後の直線は、1頭だけクラスが違うような走りで、楽な手応えのまま、待望の初勝利を飾りました。この競馬ができれば、クラスが上がっても大丈夫です。