■ラウールが新境地を見せられるか
純愛物語だと思いきや、実は“こじらせキャラ”ばかり登場する本作。愛実(木村)は元ストーカーで入水自殺を図ったことがあり、交際相手の川原(中島)は人妻と不倫していて、気持ちいいほどのクズ。父・誠治は温厚そうに見えて利己的なようだし、副担任・佐倉は頼りにならなそうだし、親友の百々子(田中みな実/38)は、愛実を心配するあまり足かせになりそうだ。
また、カヲル(ラウール)も純粋な一面もあるが、ホストとしてはかなりのクズ。ホストクラブの社長・松浦(沢村一樹/58)もホストたちに慕われているが、実はヤバい奴のようだ。さらに、カヲルの母・奈央(りょう/52)はカヲルをネグレクトしていた毒親で、今もカヲルに金を無心している。全員、度を越していて、この先はけっこう重い展開になるだろう。
それはそれで面白くなりそうなのだが、ドラマの出来不出来の鍵を握るのは、やはりラウールの演技力次第。ホストクラブでの振る舞いはやたらに生き生きしていたが、母と弟と対峙したときや、ビルの屋上で愛実に字を習っているときの演技には、明らかに物足りなさを感じた。特に屋上で文字を教えてもらうシーンは、思い切り木村が引っ張っていた印象だ。
今回は中島歩が怪演っぷりを見せたが、まだ本性を見せていない酒向芳に、今後登場する吉瀬美智子(50)と、嫌な大人をやらせたら絶品の俳優が揃っている本作。これらのクセの強い先輩たちに囲まれ、物語がシリアス展開となると、ラウールにも高度な演技力が要求されそうだ。つまり、本作の成功はラウールにかかっているのだ。
ただ、言い換えれば、これまではアクションやコメディ路線が多かったラウールにとって、新境地を開く好機となるということだ。『愛の、がっこう。』で未体験の難しい役柄にチャレンジすることで、ラウールが成長していくのを期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。