日本競馬界のレジェンド・武豊が名勝負の舞台裏を明かすコラム。ここでしか読めない勝負師の哲学に迫ろう。
今年の夏も、爽やかな北海道で——。
鞍、ブーツや勝負服など身の回りのものと一緒に北の大地に移動し、若手に交じって武家のルーツがある函館で全力騎乗。おいしい食事と、おいしいお酒を味わいながら、充実した毎日を送っています。
1年中、ずっと、ここで乗っていたいと思うほど、馬にも人にも優しい環境で競馬ができることに、改めて感謝です。
その函館開催も、残り1週。6月が終わった時点で、函館リーディングのトップに立った僕は、7月5日8R(芝1200メートル)を千田輝彦厩舎のベビーズブレスで、まず1勝。
続く9R芝1800メートルの恵山特別を、石橋守厩舎のウォータークラークでⅤ。
兄と慕う石橋厩舎の馬での勝利は、3月16日中京9Rのヤマニンアストロン、そして、6月15日メイショウタバルでの宝塚記念制覇に続き、今年3つ目の勝利となりました。
ベビーズブレスは、芝1200メートルのレースなら今後も期待できそうですし、最後に、いい脚を見せたウォータークラークは、秋に向けて、さらに良くなってくれそうです。
7月5日(土)を終えた時点で、31鞍に騎乗して9勝2着4回3着3回で、函館リーディングのトップをキープ。デビュー39年目で、初タイトルを狙える位置にいるということに嬉しさ8割。残りの2割は、
「いつまでも、‟おっさんジョッキー”にやられていていいのか?」
という若手ジョッキーへの叱咤激励です。
翌日曜は、7鞍に騎乗して、2着1回3着2回と、僕が足踏みをしている間に、昨年、函館リーディングに輝いた横山武史騎手が2勝を上積みし、僕との差はわずか1勝。ワクワクするような展開になってきました。