■マンネリが心地良い『放送局占拠』
武蔵の娘・えみり(吉田帆乃華/11)がダクトで脱出したり、武蔵の決めセリフ「ウソだろ…」を、えみりの「ウソよね…」、和泉の「ありえない…」、捜査員・本庄(瀧内公美/35)の「冗談でしょ…」などとバリエーションを増やすなど、自己パロディを連発。シリーズのファンにはウケているようだが、ここまで新しい要素が皆無なのが気になる。
加藤清史郎演じる伊吹は新キャラで妖や過去の事件と関連があるのではという声もあるが、主人公の身内や関係者が犯罪に絡んでいるパターンは、武蔵の妻・裕子(比嘉)が『大病院占拠』で事件の発端となるワクチン開発に携わった疑惑があり、特に新しくはない。今回も、毎度おなじみの「実は罪を犯していた」パターンが繰り返されることになりそうだ。
決まり事をしっかりなぞっていく本作を見ると、これはもはや、令和の“水戸黄門”状態なのではと思ってしまう。病院、空港、放送局と舞台はかわれど、展開はほとんど一緒。シリーズ3作目となり、それがますますはっきりしてきた。
マンネリではあるが、シリーズのファンにとっては、難しく考えずに見られて、毎度の展開を楽しめる優しい作りともいえる。嵐のメンバーのポスターがあったり、自己パロディがやたら多いのも、いいアクセントだろう。
すでに多くのファンを抱えている本作。ヘタな冒険はしないで、“水戸黄門”に徹するのが正解なのだ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。