■「若手芸能人が政治的発言をするようになった背景」元キー局プロデューサーが分析
玉川氏の発言はSNSでも大荒れとなったが、猪狩も同発言を引用し、
《まるで自分は利口な側にいるような言い振り。「投票は知識がある人だけの権利」とでも言いたいのでしょうか。
あれだけ選挙に行け行けと言っていたメディア側の人間が、次は知識がない人間は選挙に行くなでは通らないでしょう。
まずは投票率が上がったことを喜び、さらに投票率を上げるにはどうしたらいいか?国のために良き政策を取ってくれるのはどの政党か?など一人一人考えて次に進めればいいと思います》
と、バッサリ斬り捨てたのだ。
そのほかにも、モデル・タレントの藤田ニコル(27)や、芸人のやす子(26)など複数のタレントが期日前投票に行ってきたことをXで報告するなど、政治に関心があることを思わせる若手芸能人は、以前と比べると多い感じがある。
こうした現状を、元テレビ朝日プロデューサーで報道、情報番組を手掛けてきた鎮目博道氏は、こう分析する。
「まず、 タレントが政治的な話をすると仕事に差し支えるから発言を避けた方がよい、というのがかつての芸能界では常識的な考え方だったのが、SNSの普及もあり、変わったことが大きいですよね」(鎮目氏、以下同)
最近のテレビ局は、SNS上で拡散力があるタレントをキャスティングする傾向にあるという。そのため、SNSでしっかりとした政治意見を言えることも大切だと見られるようになり、かつてと比べて、政治発言をすると芸能活動に差し支える、という空気が薄れているようだ。
「“テレビの仕事の質”というのも、大きく変わりつつあります。かつてはタレントが政治意見を言う番組は少なかったですが、最近ではタレントが生放送やワイドショーなど、ニュース性の強い番組にゲスト(コメンテーター)で呼ばれることも増えましたよね。
たとえば、『サンデージャポン』(TBS系)のような、ある意味でバラエティ番組に近いよう番組でも、政治的意見も含めて、ニュース性の高い発言ができるかどうかが出演するためにも必要になった感じ。だから、自分の意見を言える人の方が、お仕事がもらえる状況に変わっているところがあると思います」
昔とは逆で、タレントとして活躍したいなら、政治発言も含めて、自分の意見を言えることが必要条件になりつつある、と鎮目氏は解説した。
「また現在は、若者にテレビを、特にニュースやワイドショーを見てもらえない時代ですよね。そのため、これまではある程度年配の人が面白いことを言えればいい感じもありましたが、今は制作サイドで“若い人の意見が欲しい”というニーズが強くなってきているんです。それだけに、コメンテーターを若い人にしたい、という思いも局側にあるのかもしれませんね」
今後も、SNSやメディアで政治について私見を述べる若手タレントは増えていきそうだ。
鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)