■“個人の意見か?番組の意見か?”元キー局プロデューサーの見解

『報道特集』と同番組で物議を醸した山本アナの発言について、テレビ朝日プロデューサーで報道、情報番組を手掛けてきた鎮目博道氏は、こう見解を話す。

「基本的に報道番組は、台本に沿って進行します。そのため大部分の発言は番組側も把握しているんですが、台本の内容が“ここで感想を一言”のような、ざっくりした指示の場合もあるんです。

 それに、最近はニュース番組でもアナウンサーが自分の自由な感想を述べても良い潮流になっているところもあるので、“ここで取材の感想を言う”みたいな台本だと、アナウンサーが自由な意見を言うことになるところはありますね」(鎮目氏)

 鎮目氏は『報道特集』について、こう続ける。

「『報道特集』は、アナウンサーがディレクターと特集の取材をすることが多く、その感想を述べることが多いんですよね。だから、アナウンサーの完全に自由な個人的な感想というよりも、“番組の感想”と捉えるのが自然だと思います。取材陣を代表してのコメントをアナウンサーが述べている感じですから、完全に個人の発言、ということではないと思います」(前同)

 さらに鎮目氏は、7月26日にも『報道特集』が参政党に対して批判的になりそうな特集を放送する件についてこう言う。

「基本的に『報道特集』は、日本のニュース番組で最もリベラル寄りなんです。つまり、政治的立場が保守派の参政党から、最も遠い立ち位置にいる番組なのは間違いない。同番組は以前からNHK党の問題にも触れていたし、参政党が台頭する危険性も取り上げていました。リベラル側から社会に警鐘を鳴らすのが基本姿勢の番組ですから、今後もスタンスを変えるつもりはないと思います。

 ちなみに、TBS全体がリベラルで反参政党ということではありません。同党に理解を示す報道をした番組もありましたよね」

 TBSの番組では、爆笑問題太田光(60)が参政党代表の神谷宗幣氏(54)と対談した『選挙の日2025』(7月20日放送)、井上貴博アナ(40)が、参政党が掲げる“日本人ファースト”に対して「即、これは差別だと過剰反応するのは、私は個人的に違和感があって」と発言した『Nスタ』(同21日放送)などの番組もある。

 前出の民放キー局報道局ディレクターは言う。

「TBSには複数の報道番組がありますから、両方の視点で報じてバランスを取っているところはあるのかもですね。

 また『報道特集』を巡っては、今年7月に編集長が異動で番組を離れるということがあったといいます。それによって番組の放送内容に多少なりとも変化があったのかもしれません」

 7月26日も参政党を追及するような放送になると見られているTBS『報道特集』。多くの視聴者、そしてテレビマンからも注目が集まっている。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)