日本競馬界のレジェンド・武豊が名勝負の舞台裏を明かすコラム。ここでしか読めない勝負師の哲学に迫ろう。

 GⅠレースで1番人気なら胸を張って臨みたいと思いますが、それ以外はレース後に聞いて、“そうなんだ”というくらいです。おそらく、こう感じているのは僕だけでなく、多くのジョッキーも同じだと思います。

 ふだんはそんな感じですが、誰もが注目する馬で、単勝1・1倍の圧倒的な支持を得ている馬とのコンビで挑むときは、“これは負けられないぞ”という気持ちが先に立ちます。

 7月12日函館5R新馬戦(芝1800メートル)に出走した、白毛馬のマルガも、そんな1頭でした。

 父はモーリス。母のブチコ、母母のシラユキヒメ、姉のソダシも白毛馬。注目度が高く、単勝は1・1倍の圧倒的人気です。

 無理せず、スッとハナに立つと、楽な手応えのまま、2歳コースレコードで優勝。ゴールした瞬間は、嬉しさより先に、思わず「ふぅ」と、安堵のため息を吐いていました(笑)。

 この日、走った感じではベスト距離はマイルかなと思いますが、成長して、どう変わっていくのか。ワクワクしています。

 土・日の開催を終えて、苫小牧のノーザンホースパークに移動して、セレクトセールを見てきました。

 初日1歳馬の主役は、現役時代GⅠ7勝を挙げ、2年連続で年度代表馬に輝き、初年度にGⅠ6勝のイクイノックス、2年目に皐月賞馬のソールオリエンス、4年目には産駒初のダービー馬のクロワデュノールといった怪物級の兄を持つ、キタサンブラック産駒です。

 セリは、あっという間に2億円を超え、3億円の声にも手は挙がり続け……母が豪州GⅠ4勝というモシーンの2024が、4億2000万円。

 ヴィクトリアマイルと香港Cを制したノームコアの2024が、4億1000万円。ローズSを勝ったラビットランの2024が、3億2000万円。

 ベスト3は、すべてキタサンブラック産駒。11頭が上場され、10頭が1億円を超えるという、“キタサン祭り”になりました。