■ペットから感染することもある!

 真夏の列島を恐怖に陥れる“殺し屋”は、人里近くに出没する獣だけではない。気づかぬうちに頭上から来襲する、体長5センチを超えるオオスズメバチも危険な存在。年間で20人前後がアナフィラキシーショックで死亡している。

「近くに巣がない限りは積極的に刺さないので、もし服に止まっても、動かないようにして、慌てず優しく払いましょう。もし刺された場合は、患部を水で洗い流して病院へ行ってください」(全国紙社会部記者)

 スズメバチよりもずっと小さな“吸血鬼”も、人の命を奪いにくる。

「国立感染症研究所によると、2013~25年1月までにマダニが媒介した『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)』の発症例1058人中、116人が死亡。意識障害、多臓器不全などが主な症状です」(前出の社会部記者)

 ペットのイヌ、ネコに付いたマダニが家庭に持ち込まれる例もあるので、油断は大敵だ。重篤な症状を招くライム病、日本紅斑熱などもマダニが媒介する。

「同じくダニの一種であるツツガムシの持つリケッチアという病原菌は、未治療なら致死率80%程度という凶悪さ。軍事用に研究されているほどです」(パンク町田氏)

 しかし、「被害を防ぐコツはある」と、パンク氏は続ける。

「例えば、夏にキャンプをする場合、テントを張る前に、地面へ殺虫剤を撒きましょう。ピレスロイド系のものなら、人間や哺乳類のペットにも無害。

 また、長袖長ズボンで対策しても裾や袖口からダニが入り込むことがあります。虫よけスプレーを全身にかけると、より効果的です」

 それでもダニに刺されたら……パンク氏は言う。

「刺しているダニに油やワセリンを塗ると、呼吸ができなくなって自然と離れます。無理やり引き抜こうとして失敗すると、体内に頭が残って、リンパまで腫れてしまうこともあります。その場合は、すぐに医師に診てもらってください」

 レジャーの際は、“真夏の殺し屋”たちに注意を!

パンク町田(ぱんくまちだ)
1968年、東京都生まれ。NPO法人生物行動進化研究センター理事長、動物研究家。近著に『パンク動物記 アフリカの最強動物』(ポプラ社)、『パンク町田の動物たちの嘘のような本当の話』(三笠書房)等がある。