相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。

 60年ぶりに本場所の会場をIGアリーナに変更した名古屋場所も終盤戦。新横綱の大の里は、4日目にオレの三男・王鵬に金星を配給してしまったものの、プレッシャーに負けずに、よく戦っている。

 一方、優勝候補筆頭かと思った横綱・豊昇龍は序盤で3敗し、5日目から休場。正攻法の予想が通じないのが今の相撲界だね。そんな豊昇龍から金星を奪ったのが前頭筆頭の21歳、安青錦。入門3年目ながら規格外の強さを見せ、来年は、大の里と2人で角界を引っ張っている可能性もある。

 名古屋場所といえば、昨年までは、名古屋城内にある愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)で開催されていた。ここが他の場所と違うのは、東西の支度部屋が壁1枚で仕切られているところ。お互いの支度部屋の話し声も聞こえるし、何より支度部屋の外にトイレと風呂があって、対戦前も後も相手力士と顔を合わせるから、やりづらかった。

 しかも、7月の名古屋はビックリするくらい蒸し暑い。オレが大嶽部屋の師匠をしていた頃、暑さや負けた苛立ちから、弟子のロシア出身・露鵬が支度部屋で暴行事件を起こしたことがあった。もちろん、師匠であるオレの責任も大きいが、そうした間違いが起こりやすい場所でもあった。だから、八百長の駆け引きの温床にもなっていた。

 今度の場所は支度部屋もキッチリ分かれているし、空調もバッチリ。しかも、マス席は従来の1.3倍に広げたから、お客さんもくつろげるんじゃないかな?