■定年延長よりもマス席を広げよ

 でも、「マス席が狭すぎる」「現代人の体格に合っていない」なんてことは、以前から言われてきたこと。両国国技館だって、いつも相撲で使っているわけじゃないんだから(年間60日程度)マス席を広げることくらいできるはずなのに、なぜ、やらないんだろう? 相撲協会が潤っている今、やることは定年延長じゃなくて、「観客ファースト」の環境整備だと思うけどね。

 オレが入門した1983(昭和58)年当時、国技館は蔵前にあった。新弟子は相撲教習所で相撲の基本を学ぶんだけど、毎日必ず蔵前国技館を何周か回るランニングがある。

 力士は基本、裸足だ。裸足でランニングが終わって足裏を見ると、いつもビール瓶の破片なんかが付いていたっけ(笑)。食堂は外。酔ったお客さんもたくさんいて、片付けもままならなかったんだろう。

 そして、昭和60年の初場所、国技館は両国に移転。大きくて空調が効いていて、清潔な両国国技館の土俵に上がったときは、誇らしい気持ちになったものだ。その場所、大横綱・北の湖関が引退したり、「時代」が変わったときでもあった。

 あれから40年——。IGアリーナのこけら落としと大の里の横綱昇進には、新しい時代を感じるね。

貴闘力忠茂(たかとうりき・ただしげ)
1967年9月28日、兵庫県生まれ。二子山部屋(入門時は藤島部屋)入門後、83年に初土俵。最高位は東関脇。2000年に幕尻(前頭14枚目)で初優勝する。02年に引退し、大鵬部屋の部屋付き親方となるが10年に野球賭博関与のため日本相撲協会を解雇される。現在は焼肉店『ドラゴ』を経営。