■迫力がありすぎな生田斗真と渡辺謙
さらに、《時代もので悪の権化のような役をやらせたら、生田斗真の右に出るもの無し(褒めてる)》《意次が治済の背後に回った瞬間に思わず息を呑んだ。世界のケンワタナベと2人であの距離でアップになっても、敵役として遜色なく存在できる生田斗真さん、凄い》など、憎まれ役を演じる生田も称賛されていた。
今回の最大のハイライトは、意次(渡辺)と治済(生田)が対峙するシーンだろう。意次が音もなく治済の背後に迫ってにらみを利かせる、渡辺謙の迫力はすごかったが、それに動揺した様子など1ミリも見せず、治済がそのまま受け止める、生田斗真のヒリヒリした空気感もものすごかった。
史実により、今後、意次が失脚することがわかっているため、なおさら失脚の黒幕となる治済の不気味さが際立つ。その治済の怖さを増幅するかのように、蝦夷調査にいった平秩東作(木村了/36)の消息が途絶えていることも描く、森下佳子氏の脚本の構成のうまさには恐れ入った。
さらに、今回は治済の嫡男で、のちの第11代将軍・徳川家斉となる豊千代も登場。かわいらしく飄々とした雰囲気で治済に似せつつ、その背後で動く陰謀の怖さを感じさせる細かな演出に、X上では、《表情がね!生田斗真さんが演じるあの胡散臭い笑顔ソックリ!!めちゃくちゃ寄せてる》などと驚きの声が。
第10代将軍・徳川家治(眞島秀和/48)の死去を機に田沼意次が失脚し、その後、寛政の改革を主導するも、家斉と対立してしまった老中・松平定信も失脚していく。それら権力抗争の裏側に居続ける治済は、ある意味で裏の主役だといえる。
そんな治済を、蔦重が戦う相手だと自覚した第28回は、今後、物語が一気にうねりだす、重要な回となりそうだ。そんな中で、憎らしければ憎らしいほどドラマが盛り上がる、治済を演じる生田斗真に注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。