■『19番目のカルテ』はあえての地味路線
これまでの出演ドラマは、俺様キャラなど松本の個性を活かした、“ザ・松潤”な役柄が多かったが、本作ではそうした個性の押し出しは抑えられ、受けの演技に徹している。それがゲスト俳優を引き立てていて、今回も杉田雷麟にはX上で、《抱えていた苦しみを吐き出したときの演技が真に迫っていて、物語にすごく引き込まれた》などと、絶賛の声が寄せられていた。
日曜劇場といえば、陰謀渦巻く巨悪や、大災害に立ち向かう、とにかく派手な作りが多い印象だ。一方、本作のような穏やかな作品は少なく、近年では、24年1月期の西島秀俊(54)主演『さよならマエストロ』ぐらいしか見られない。本作は希少なタイプの作品で、日曜劇場的には挑戦作と言えるだろう。
今後の展開は、徳重(松本)の過去、恩師(田中泯/80)との関係、外科医・東郷康二郎(新田真剣佑/28)との対立などが、大ネタとして描かれるだろうが、基本は毎回、各科の医師と患者の関わりで物語をすすめていく、波風の少ない作りになると思われる。
最近のドラマは、複数ジャンルのハイブリッドが増えていて、今年秋にスペシャル版の放送が発表された、24年10月期の松下洸平(38)主演『放課後カルテ』(日本テレビ系)のような「医療×ヒューマン」は流行りの組み合わせのひとつだ。
本来、保守的な作品傾向にある日曜劇場だが、今作はその流れに乗ったということだろう。この静かな『19番目のカルテ』が、どう展開していくか、楽しみだ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。