■エアコンなし男の生活を医師はどう見るのか
真夏の暑さ対策としてYがオススメするのが水分補給だ。
「自宅で麦茶を沸かすんだけど1日500mlは飲むようにしているね。他にも職場で最低1本はペットボトルを消費するね。睡眠前にもコップ一杯分のお茶を飲むのは欠かさないよ」
一連のYの行動を専門家はどう見るのか。元東京大学医科学研究所特任教授の上昌広医師が話す。
「マンションで風通しが良ければ、Yさんの様な過ごし方も問題はありません。高齢者と比べて40代なら発汗能力もまだ高いでしょうから体温も下がりやすいでしょうしね」
ただし、高齢者が同じような過ごし方をするのは「危険だ」と上医師は話す。
「高齢者は必ずエアコンを使用してください。扇風機だけというのももってのほかです。今、日本の気温は人の体温を超えている。室内で扇風機だけ回しているのは熱風を自分に向けて当てているのと同じです。必ずエアコンを使用し、室内温度を下げましょう」
また、Yが実践する睡眠前の水分補給は「重要だ」と上医師は指摘する。
「脱水症状を避けられるので水分を取るのは大切です。脱水症状は脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。高齢者は目が覚めるからと夜間の水分補給を嫌がりますが、コップ1杯分で構いませんので睡眠前には水を飲みましょう」
くれぐれもYを見習わず、無理のない暑さ対策を!
上 昌広(かみ・まさひろ)
特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」理事長。 1968年生まれ、兵庫県出身。東京大学医学部医学科を卒業し、同大学大学院医学系研究科修了。東京都立駒込病院血液内科医員、虎の門病院血液科医員、国立がんセンター中央病院薬物療法部医員として造血器悪性腫瘍の臨床研究に従事し、2016年3月まで東京大学医科学研究所特任教授を務める。内科医(専門は血液・腫瘍内科学)。2005年10月より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究している。医療関係者など約5万人が購読するメールマガジン「MRIC(医療ガバナンス学会)」の編集長も務め、積極的な情報発信を行っている。『復興は現場から動き出す 』(東洋経済新報社)、『日本の医療 崩壊を招いた構造と再生への提言 』(蕗書房 )、『日本の医療格差は9倍 医師不足の真実』(光文社新書)、『医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい』(講談社+α新書)、『病院は東京から破綻する 医師が「ゼロ」になる日 』(朝日新聞出版)など著書多数。