日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が、本サイトで現代のトレンドを徹底解説。いま戸田氏が注目するのは、“世界で加速する脱タブレット教育”だ。
2019年に文部科学省が発表したGIGAスクール構想は、全国の小中学校に「1人1台端末」と高速通信ネットワークを整備し、タブレット端末などのデジタル技術を活用した教育を目指しました。新型コロナウイルスの影響もあり、当初は急速に普及したように見えましたが、現在では国内外でその在り方が見直され始めています。
「教育先進国」と呼ばれるスウェーデンでは、2023年から紙の教科書や手書き中心の授業に大きく方向転換。フィンランド、フランス、イギリス、オーストラリアなどでも、特に低学年を中心にアナログ回帰の動きが加速しているといいます。なぜ、世界中でタブレット教育からの回帰が起きているのでしょうか。
最大の懸念は、学力や読解力の低下です。デジタル教材に依存することで、子どもたちが文章を深く読み解く力が育ちにくくなり、集中力も低下する傾向が国際調査でも報告されています。画面上の文章は、理解や記憶の定着が浅くなるという研究も……。さらに、タブレットは通知やアプリの誘惑が多く、「ながら学習」に陥りやすい点も問題視されています。多くの教員からは「紙教材に戻しただけで、子どもたちの集中力が明らかに回復した」との声も聞かれています。