■世界中で行政の支援が拡大する「書店文化」とその理由とは
さらには、行政の支援も拡大中。青森県八戸市では市が運営する書店「八戸ブックセンター」をオープン。経済産業省でも昨年、省内横断の書店振興プロジェクトチームが立ち上がりました。海外に目を向ければ、フランスがネット書店の送料無料制度を廃止し、韓国では公立図書館が地域書店から優先購入する方針を採用。いずれも「書店は文化インフラ」という明確な視点に基づいた取り組みです。
「本を売るという行為は、単なる物流や販売ではありません。棚に本が並んでいるだけで、その地域の知的な環境や文化の成熟度が可視化されます。書店は人と本、人と地域、人と未来をつなぐハブとしての機能を持っているんです。今はただ売上を伸ばすだけではなく、地域にどれだけ寄り添えるかが問われている時代。書店が“+α”の価値を提示し、そこに人が集まり、再び本が売れるという循環を作れるかどうかが、取次や出版社を含めた業界全体の課題です」(出版関係者)
令和の書店に求められているのは、単に本を売る場所ではなく、人の暮らしや地域の営みに寄り添う、“新しい役割”。本屋の反撃は、もう始まっています。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。