最近のドラマは復讐や不倫ものが流行っていたが、今年前半でヒットしたのは、小泉今日子(59)と中井貴一(63)がダブル主演した月9ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)という、真逆の穏やかな日常を描くドラマだった。これは今年のドラマ界の最も大きな事件だ。

 同ドラマは、古都・鎌倉を舞台に、ドラマ制作部ゼネラルプロデューサー・吉野千明(小泉)と、鎌倉市役所を定年退職後、観光課で指導監として働いている長倉和平(中井)の、大人の恋を描いたロマンチック&ホームコメディ。2012年の第1期とスペシャル版、14年の第2期に続く第3期目となる。

 描かれるのは50~60代のリアルな人生と恋愛だ。若者に忖度することのない、シニア向けドラマかと思われたが、全話平均視聴率が7.7%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)、配信サービス・TVerのお気に入り登録数の最高値が129.0万(25年6月19日)と、ともに好調だった。

 スマートフォンやパソコンなど、メディアの多様化もあって、テレビ視聴者は高齢化している。そのボリュームゾーンを狙い撃ちしたのが本作。加齢、定年、家族や友人との関係の変化など、同世代が共感できる、細かくもリアルな描写を揃えたことで、成功は当然だったといえる。しかし、支持を受けた理由はそれだけではない。