■悲劇の予感しかない『愛の、がっこう。』

 格差、毒親、発達障害など、現代社会の問題をいろいろ扱っていて、本作は実はかなりの社会派ドラマだ。カヲルが文字の読み書きに困難を抱える発達性ディスクレシアなのも、単なる愛実との個人授業のきっかけだけにせず学習障害の実情なども語られ、正面からその問題に取り組もうとしている。このことで、ストーリーはより重みのあるものになっている。

 愛実とカヲルが徐々に距離を近づけていて、次回から禁断の恋がはじまりそうだ。しかし、その周りにいるのは、モラハラ気質の愛実の父・誠治(酒向芳/66)、カヲルに金をせがむ母・奈央(りょう/52)と、その再婚相手・香坂(木原勝利/44)など、かなりヤバい人物ばかり。

 それは、同時に別の女性と不倫したり、愛実を尾行したりと、当初はクズ男っぷりで視聴者をドン引きさせていた川原でさえ、相対的にまともに見えるほど。物語が進むにつれそんなヤバい人物たちとの関わりも深まり、愛実とカヲルの悲劇の予感がどんどん高まっていくという……『昼顔』(同局系)を手掛けた井上由美子氏のさすがの神脚本だ。

 また、たびたび劇中で語られる「歌舞伎町ホスト刺殺事件」は、物語のキーワードだと思われるが、この状況と顔ぶれなら、誰が誰を刺してもおかしくない。ストーリーがどう転がっていくのかわからない状態で、今後もじわじわと配信で数字を伸ばしていきそうだ。

 TVerのお気に入り登録数では、76.9万で今期ドラマ中4位の『DOPE 麻薬取締部特捜課』(TBS系)と、10万近く差があるが、こちらは数字の伸びが凪状態になっているので、勢いのある『愛の、がっこう。』が抜く可能性はある。今後の禁断なのに純愛な“愛”の行方に注目だ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。