出産後に母親役を演じた俳優が、自身の経験を重ねることで新境地を開拓することがある。今年前半、そんな母親役で最も支持を得たのは、『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』(TBS系)で主演した多部未華子(36)だろう。ドラマはヒットし、多部にも共感の声が多くあがっていた。

 同ドラマは、同枠で19年放送の人気ドラマ『わたし、定時で帰ります。』の著者である、朱野帰子氏の小説『対岸の家事』(講談社文庫)が原作。専業主婦・村上詩穂(多部)が、働くママや育休中のエリート官僚パパなど、異なる立場や考え方を持つ“対岸にいる人たち”と交流していく姿を描く、家事をテーマにしたお仕事ドラマ。

 キービジュアルなどからほんわかした育児ホームドラマを予想させたが、実は、現代社会における家族の問題をテーマにしており、けっこうシリアスな内容のドラマだった。ワンオペ育児、育休、子作りのプレッシャー、シングルマザー、さらに年老いた親の介護など、解像度の高い描写が続き、多くの視聴者の共感を呼んだ。

 X上では、《専業主婦とワーママ。一見正反対の立場に見えるけど、自分の選択に悩んだり怖くなったりするのは一緒。自分にも他者にも優しくしたくなる、困っている人に手を差し伸べたくなるドラマだった。このドラマ、すごく好きです!》など、専業主婦と働くママのそれぞれの苦悩が描かれたことに大きな反響があった。