■幅広い世代から支持された『対岸の家事』
当初は、育児を経験した人たちの共感の声が多かったが、頑張っている人のしんどさを描く誠実な姿勢は、幅広い世代に届いたようで、X上には、《どんな立場の人物にも細やかで温かな視線を向けている》という指摘も。そのため、配信サービス・TVerのお気に入り登録数は120万を超え、圧倒的な数字を記録した。
さらに、親同士、夫婦間、職場などで対立している相手とちゃんと対話し、それぞれの立場を認め合うという作りも良かった。家事をやらない夫や、共働きに理解のない同僚、それぞれの立場を説明し、ちゃんと相手を理解する方向に落としこんでいたのだ。しんどさを超えた優しさがあり、それも多くの支持を受けた理由だろう。
育児ドラマというと、親子の関係にフォーカスしがちだった。しかし、本作は育児を通して、社会の中で立場の異なる人々が抱える、“生きづらさ”という現代社会の問題にもスポットを当てており、ヒットも納得の内容だった。多部未華子も本作で母親イメージが定着しており、今後は母役のオファーも増えそうだ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。