■新たに登場した「TELハラ」という概念
こうした背景もあってか、「TELハラ(テルハラ)」という言葉も登場。これは職場において上司や先輩が立場の弱い若手社員に、電話対応を強要するハラスメントのこと。電話対応があまり上手くできない若手社員に対して、人格を否定したり、嫌がらせを行ったり、あるいは、必要以上の叱責や、若手社員が電話対応を上手くこなせるようにサポートを怠ることも、テルハラに該当します。
こうした現状を受け、企業も対応を見直しつつあります。
「若手社員が電話を苦手とするのは、今や前提として捉えるべきです。当社では段階的に慣れてもらいつつ、チャットやメールを積極的に活用しています。固定観念にとらわれず、働く人に合ったコミュニケーションを整えることが、これからの人材育成だと思います」(メーカー人事担当者)
一方で、電話応対を外部に委託する企業も急増。代表電話を代行業者に任せる取り組みは、ここ1年で800社以上に導入されているとも言われており、社員からは「業務に集中できるようになった」「電話恐怖から解放された」との声が上がっているといいます。
もちろん、電話であれば声のトーンで相手の感情を読み取ることができ、謝罪や感謝などデリケートなやり取りには適しています。
しかし、時代は確実に変わりました。若手社員が電話を取れないことを責めるのではなく、どうしたら安心して仕事ができるかを共に考える視点こそ、これからの組織に求められているのではないでしょうか。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。