King & Prince岸優太(27)主演の『すきすきワンワン!』(日本テレビ系)の第9話は、炬太郎(岸優太)が悲しみに耐えながら天(浮所飛貴/20)が大切だと伝える芝居が胸を貫いた。天との穏やかな生活に小さな幸せを噛み締めていた炬太郎だったが、天から犬の記憶が消えてしまうかもしれないと知り大きなショックを受ける。お互いを大切に想って、静かに泣いているのがつらすぎた。

■どうしてこんなに炬太郎の涙は切ないのだろう

 こたつの布団で仲良く並んで眠る炬太郎と天は、まさに「バカップルだな」という炬太郎の言葉通り、仲良しすぎて微笑ましい。だけど、満月に雲がかかる。ヒュッと短い風の音、火の消えた焚火台。炬太郎が言う「普通の小さな幸せ」に暗雲が立ち込め、火が消えたように冷たくなってしまうことを予感させた。

 身の丈に合った暮らしの大切さを噛みしめ、穏やかな時間を過ごす、炬太郎と天。だけど、天のひと言で雰囲気が一変する。「ねえ、この柱の傷どうしたの?」と。天は、飼い犬のてんだった頃の記憶が徐々に薄れてきていた。だから、意図せず何度も同じことを聞いてしまう。炬太郎が「記憶が薄れるってことは、忘れるってこと?」「そんなのありえないだろ」と、天の異変を受け入れられない。

 天だって、受け入れがたいだろう。炬太郎が大好きで、会いたくて、遠くシリコンバレーから引越してきたのだ。今、目の前にいる炬太郎のことを忘れてしまうなんて、信じられないし信じたくない。だけど、自分ではどうしようもないから、「コタくん……」と言葉に詰まってしまう。

「俺が大事にしてた、今の……今の、この小さな幸せがなくなってしまうってことだ」、絞り出すように言葉を紡ぐ炬太郎。表情を歪ませ、目には涙がじわじわと溜まっていく。見えないけれど、こたつに入れている手はぎゅうぎゅうに握っているかもしれない。

 天も泣いているから、自分の感情を押しつけて悲しませたくないから、声を抑え、体を固まらせて、悲しみと不安に耐えて静かにしているのだ。なんて優しい人なのだろう。天が自分を忘れてしまう、好きじゃなくなる、一緒に暮らせなくなる。これまでの幸せな時間も、自分のことも、何もかもぜんぶ忘れてしまうことが、こんなに切ないなんて。

 炬太郎を演じる岸の渾身の芝居、炬太郎の感情が自分の感情となって、体の内側から溢れてきていた。大切な人を失う苦しみと悲しみがストレートに伝わってきて、涙が止まらなかった。