■芝居を超えて炬太郎という人物になる岸優太

 ドラマの冒頭部分、炬太郎が天にインターン先での経験と採用結果を天に伝えるのだが、岸の長いせりふは何ページ分あっただろう。焚火を前にして、天と2人きりでゆっくりと話をした時間は、おおよそ3分。説明せりふなどではなく、炬太郎の心の内を丁寧に伝える重要なシーンだ。

 インターンの結果は残念な結果になったけれど、炬太郎は誰も責めない。むしろ、自分を気遣って不採用にしてくれたのだと、相手を立てて現実受け止める人なのだ。穏やかな表情で、採用にならなかった理由を自分なりに考えて、つぎの仕事に生かそうとする炬太郎がとてもいい。次に選ぶのがどんな仕事だろうと、その真面目さと誠実な対応で素晴らしい人間関係を築き、成果も上げるだろう。

 青空の下、河原でキャッチボールをする炬太郎と天に胸がいっぱいになる。かつて、天がてんだった頃、この場所で、ボールを投げて一緒に遊んだ。ボールを拾って戻ってきたてんを、ワシャワシャして褒めてあげた、幸せな時間。炬太郎と天それぞれの、忘れたくない、絶対に忘れないんだという強い気持ちが伝わってくる。帰りには、駅前のコロッケを1個買って、半分にして食べ合う。一緒に帰って、暖かい布団で眠って、朝を迎える。そんな「小さな幸せ」が、これからもずっと続いてほしい。(文・青石 爽)