■12時間以上の赤裸々な勤務実態が物議

 9時30分から21時45分までという12時間以上(昼休憩を1時間とすると11時間)にわたる長時間の業務に対し、YouTubeのコメント欄には、

《がんばれー農林水産省の皆さん!》
《お疲れ様です。応援してます!》
《お疲れ様ですーイベントの成功祈念しております》

 など、励ましのメッセージが寄せられた一方で、

《くそブラックやな》
《広報動画で22時まで勤務をわざわざ載せるって、、、、》
《広報で若手だからという理由でSNS担当になってそうでかわいそう。通常業務もあるのにそれしながらってキツそう》

 と、イベントの準備という事情があったにせよ、労働時間が長いことやその業務内容に対する厳しい意見も多い。また8月5日には、農林水産省の公式インスタグラムにもこの動画が公開されると、さらに拡散され、注目を集めることとなった。インスタグラムのコメント欄では、

《当たり前のように10時まで残業してて草 ほんまに大丈夫か》
《広報用として世間に見せる姿で22時退勤か。動画回していなかったら一体何時まで労働してるのだろうか》
《国が働き方改革を進めようとしてる割には、どうなんだろ、この働き方》

 と、やはり労働時間に対するネガティブな反応が続出した。

 かつての日本社会では“残業は美徳”とされ、終電まで働く光景も珍しくなかった。しかし今は、働き方改革関連法の施行により労働時間に明確な上限が設けられている。2019年4月、大企業から導入されたこの制度では、時間外労働は原則「月45時間・年360時間」までとされている。

 繁忙期など特例が認められても「年720時間以内」「単月100時間未満」などの基準が課される。2020年には中小企業にも適用が拡大され、かつての青天井残業は法律上不可能になった。長時間労働が当たり前だった時代と比べ、日本人の働き方は少しずつ変わりつつある。

 厳密に言えば農林水産省の職員はサラリーマンではなく国家公務員ではあるが……批判のコメントがついた原因について、SNS事情に明るいウェブマーケターが指摘する。

「視聴する側からしたら、こういった職場を発信する動画は“職場のPR”の一端も担うという認識が強い。なので、あえて残業の多い日を切り取らないのが普通という考えのもと、視聴者は“これが日常”ととらえてしまったのでしょう。

 農水省職員は、短期間でこなさなければならない業務もあり、負担も大きい職場です。ただ、仮にvlog動画が日常ではないのだとしたら、テロップで“多忙な一日”と付けるなど、毎日こんな働きぶりでないと添えたほうが誤解を招かなかったかもしれませんね」

 奇しくも、農水省における“働き方”に対して一石を投じてしまった形のこの動画。農水省はどういった意図で公開したのだろうか。農水省に聞いてみたところ、

「担当者はお盆休みです」

 との回答だった。しっかりと休みが取れていればいいのだが。