■生田斗真、不気味さの源泉
次回以降、第10代将軍・徳川家治(眞島秀和/48)の謎の多い死について、田沼意次(渡辺謙/65)による毒殺説が流れる。そして、治済の嫡男・豊千代が第11代将軍・徳川家斉となることで田沼が失脚の一途をたどる、陰謀まみれの権力抗争劇となっていくだろう。
大洪水になって利根川を決壊させることになる大雨の中での治済の舞は、その幕開けと言える。番組公式Xによると、演出が「治済はこの世でただ一人この雨を好機と捉えた人。誰の目も気にせず喜びを表現してほしい」と生田に伝え、一発勝負の本番だったという。全身で治済を演じきる、圧倒的な舞いだった。
史実からも、治済が陰謀の中心にいるのは確かなこと。だが、実はそれをはっきり見せる描写は作中になく、そう思わせるシーンを積み重ねているだけだ。それでもこれだけ“不気味さ”や“悪さ”を表現するとは、演技も演出も見事。もはや、生田がカステラやさつまいもを食べているだけで、怖くなってしまう。
江戸幕府と大奥を舞台にしたドロドロ劇が始まるが、今後も治済が派手に動くことはないと思われる。しかし、生田演じる治済が暗躍して、物語を引っ張っていくのは間違いない。“見える”より“見えない”ほうが怖いという、得体のしれない恐怖を体現している生田に注目だ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。