■犯人フラグが多すぎる『誘拐の日』

 X上では、《考察難しい…山崎さんと汐里さんを疑う気持ちが強くなるなぁ》《山崎弁護士はノーマークだったけど、意外と生きてくる?》《須之内と一緒にいる北村っていう若い刑事も怪しいしなあ。結構大風呂敷広げてるけど回収できるんだろうか》などと、入り組んだ内容に考察が混乱気味だ。

 また、《犯人フラグがたくさん立って展開読めない》という声もあるが、謎が明らかになるたびに新しい謎を出してくるから、視聴者がついていけなくなるのだろう。フラグが立ちすぎてしまい、本筋が見えにくくなっている。それは、汐里(安達)が誘拐を計画したことから、物語が始まったことを忘れるほどだ。

 今回は汐里の過去が明らかになったが、結局、凛(永尾)の両親である院長夫婦殺害は、松田(春海)が代わりに復讐したということなのか、そのあたりも不鮮明だ。かと思えば、北村刑事(佐藤寛太/29)と汐里に何か関係あるような怪しい動きをさせていたりと、さらに謎を出してきて物語の本筋がなかなか進まない。

 また、敵だった山崎(深澤)がいきなり政宗(斎藤)と凛の味方になったように、小さいどんでん返しが多すぎるのも考察を混乱させる。政宗の娘・芽生に続いて、水原(内田)の息子まで出てきたのも、水原を政宗と凛の味方にするためだろうが、わかりにくさに拍車をかけている。キャラの立ち位置が変わりすぎるのだ。

 韓国版は「水木ドラマ」枠で放送され、2夜続けて見られたので、謎が次々と出てきても、混乱することなくついていけたのかもしれない。しかし、日本版は週に1回の放送なので、ついていくのは厳しい。日本でのリメイクは、一気見できる配信ドラマのほうがよかったのではないだろうか。

 また、政宗が不安や混乱を感じるたび口にしている、ラムネの謎も残っていて、政宗が幼少期の記憶を持っていないことに関係しているのではと考察する声が多い。最近のテレビ朝日系の「火曜9時」枠は全9話が多く、本作もおそらく残り2話。散らばった謎を回収し、どう決着をつけるのか注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。