■「パクっても良い文化」はあるが…元キー局Pが解説する今回の問題点
さらに、同コーナー内では、メンバーの阿部亮平(31)による“一時期の『それスノ』はずっと俺にキレ芸をさせる台本ばかりだった”、ゲストの中条による“とてつもなく緊張する企画なのに台本が来たのが『それスノ』収録の前日だった”など、番組スタッフへの愚痴とも思えるエピソードトークも多かったことから、
《面白い話が聞けたのは良かったけど、企画丸パクリは駄目。そもそも中条さんに台本渡したのが前日だってとこから、番組側に不信感があったけど》
《番組が阿部にはキレ芸させとけばいいみたいになってたことにイライラしてたって阿部くんから本音聞けたの正直ホッとした……》
といった声も。
Snow Manファンも憤りの声を上げている『それスノ』の“パクリ疑惑”――元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏は、テレビマンとしての目線でこう話す。
「テレビ業界には、他メディアと比べると“パクっても良い”という文化があります。たとえば、番組タイトルはどうしても似てきてしまうので、お互いにほぼそっくりのタイトルでも文句を言わず、商標登録もしない、というのが習慣になっています。
ましてや、バラエティの企画が似てしまうのは仕方ないし、“あれが上手くいったから、真似させてもらおう”みたいなことも。これは、持ちつ持たれつで仕方のないことではあります。
ただ、今回は“温めてきた企画です”と、告知してしまったのはマズかったですよね。“インスパイアです(笑)”みたいに、パクったことを表明していれば、そこまで問題にはならなかったしだろうし、文句を言う人も減ったと思うんです。いかにも自分のオリジナルです、みたいな告知をしてしまったのはよくなかったですね」(鎮目氏、以下同)
鎮目氏いわく、「現在のバラエティ企画は、もはや既存のアイデアの組み合わせみたいな感じ」だからこそ、「先駆者へのリスペクトを失わないこと、ちゃんと尊敬したうえで、礼儀を尽くしたうえでパクらせていただく、というのが大切」ということだ。
パクリとオマージュの判別は難しいところだが、似た話では、クイズバラエティ番組『呼び出し先生タナカ』(フジテレビ系/22年4月~)も、話題になったことがある。同番組の “出演者に一斉テストをやらせて、珍回答をシェア(発表)する”という内容が、同局の大人気番組『めちゃ×2イケてるッ!』(~18年3月末)の人気コーナー『抜き打ちテスト』(00年7月~17年12月)とそっくりだと視聴者をざわつかせたが――、
「あれは同じフジテレビの番組同士だったので、まぁ似てもいいかな、というところはあったと思います。
特に、ある程度時間が経っていれば……たとえば、5年くらい前に流行っていたものを元ネタにするなら、誰も文句を言わないと思うんです。今回の『それスノ』と『トークサバイバー!』みたいに、時期が近い場合こそ、ちゃんと礼を尽くしたうえで “パクっちゃいました!”とネタにしておけば、仕方ないかなで済んだと思いますね」
今回の場合、スタッフや出演者が、“どこか見たことある”などと自虐ネタにしていたら、結果は違っていたということか。
「変な話ですけど、テレビマンにとってパクられる、というのは嬉しいことなんです。同業者から“よくできた成功例”だと見られているからこそ模倣されるわけですからね。だから、礼儀さえ守ってくれれば、パクられることに怒ることは滅多にないんですよ。今回も、そこさえ守っておけばなぁ、という感じですね」
特番時代から数えて今年で5周年の『それスノ』。思わぬところで大荒れとなってしまっている――。
鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)