相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。
7月27日に千秋楽を迎えた大相撲名古屋場所は、前頭15枚目の琴勝峰の平幕優勝という意外な結果で幕を閉じた。
横綱・豊昇龍が途中休場、今場所の目玉、新横綱・大の里が金星をバンバン配給する中、場所を引っ張ったのは、前頭筆頭・ウクライナ出身の安青錦だった。これまでも安青錦の徹底した前傾姿勢の相撲を絶賛してきたが、上位陣と総当たりした今場所も、その相撲が通用することが分かった。
ただ、14日目の草野戦、千秋楽、3敗同士で挑んだ琴勝峰戦を見ると、彼の弱点も見えてきた。重心が低くて、イヤラしい相撲を取るのだが、琴勝峰のような大きな力士に大きな相撲を取られると、体がない(182センチ、138キロ)だけに、吹っ飛ばされてしまう。
最後まで優勝争いを繰り広げて技能賞受賞はアッパレ! だけど、来場所以降は相手力士がだいぶ研究してくるだろうね。ただ、大型力士が並ぶ昨今、こういう力士が大関、横綱に上がると、大相撲がさらに盛り上がることは間違いない。
そして、優勝した琴勝峰だ。彼はオレの三男・王鵬と高校(埼玉栄高)の同級生ということもあって、ずっと注目してきた。体にも恵まれている(190センチ、167キロ)というのに、前頭の下のほうでウロウロしているのはケガが多いから。
ちなみに、5月の夏場所は途中休場、昨年九州場所も休場で、初場所は5勝という男がいきなり開眼したんだから、正直ビックリした。やればできるじゃん!