■ドラマチックを避ける『ぼくほし』
称賛の声には、《宮沢賢治の言葉とともに美しい無常感が漂う》《生徒の人生も教師の仕事も今日も明日も続いていく感がリアルで親近感がある》など、ドラマの世界観、生徒や教師たちの思いについて、細かく指摘するものも多い。熱心なドラマ好きからは支持されているが、一般的な視聴者はすでに離れてしまっているようだ。
その原因のひとつは指摘にあるように、一話の中ですっきりした解決が描かれないこと。第2話で不登校になった生徒が、今は保健室登校をしているなど、問題を起こした生徒が解決の方向に向かっていることは描いてはいる。今回だけで解決できなかった、有島ルカの教育虐待についても、引き続き次回で描かれるようだ。
このスタンスはリアルではあるし、物事をすぐに決めつけない本作の世界観からすると、正しい。ただ、エンターテインメント性を大事にした、ドラマらしさを求める人からすると、どこか物足りないのだろう。ある意味でアンチドラマである本作は、見る人を選ぶ作品とも言える。
次回は、国語教師・幸田珠々(堀田真由/27)への健治の好意が奇妙な行動に表れるようになる中、健治が女生徒から「先生を好きになるのは、罪ですか?」と尋ねられる。教師と生徒の恋愛というドラマチックなテーマになるようで、視聴率の数字とともに、盛り上がりに期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。