今夏は映画の興行収入を巡って、驚くような話題が続いている。

 アニメ映画では、7月18日公開の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が、公開38日間で興行収入は280億8769万4600円を突破。国内歴代興収ランキング3位にランクインし、これまで3位だったハリウッド映画『タイタニック』(1997年/277.7億円)を追い抜いた。

 実写映画では、6月6日公開の吉沢亮(31)主演の映画『国宝』の興行収入が、8月22日に110.1億円に到達。これで同作は『南極物語』(1983年/110億円)を抜いて実写邦画作品で歴代2位に。現在『国宝』の興収は115億円まで伸びているが、実写邦画作品の興収が100億円を突破したのは、2003年公開の『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』以来、実に22年ぶり。さらに、テレビ局が制作に参加していない実写邦画が興収100億円を突破したのは史上初の出来事で、歴史的大ヒットとなった。

 2つの作品の歴史的大ヒット――一見すると映画界全体が潤っているように見えるのだが、映画制作会社関係者は「実は、手放しには喜べない状況とも言えるんですよね……」と言い、こう続ける。

「確かに、『鬼滅』と『国宝』の超ヒットの影響があり、今夏、映画館ではお客さんが連日のように長蛇の列を作っています。2作には至りませんが、鈴木亮平さん(42)主演のドラマ『東京MER~走る緊急救命室~』(TBS系/21年7月期)の劇場シリーズ第2弾『南海ミッション』(8月1日公開)、菅野美穂さん(47)と赤楚衛二さん(31)のダブル主演ホラー映画『近畿地方のある場所について』(8月8日公開)などもヒットしており、こちらも多くの人に観られていますね」

『南海ミッション』は、公開3日間の興行収入が今年公開の実写映画で1位を獲得。ここまでに興収39億円を突破した。

『近畿地方~』は、初週4日間で興行収入4.4億円で、最終興収20億円も視野に入る好スタートを切った。また、今年公開されたホラー映画の3日間のオープニング成績としては、動員・興行収入ともに『事故物件ゾク 恐い間取り』(7月25日公開)、『ドールハウス』(6月13日公開)を超え、“2025年No.1ホラー映画”となった。

 前出の映画制作会社関係者は言う。

「今は、そういった話題作が多く上映される一方で“泣いている映画”がある、という話なんです。というのも、異次元の集客力を誇る『鬼滅』や、異例のロングランヒットとなっている『国宝』、そして『東京MER』など話題作が多く並んだ結果、他の映画を上映する枠が減ってしまっているんです。それも、普通なら多く上映されるメジャーなコンテンツでさえ……」