相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。
8月3日から大相撲夏巡業が始まっている。
北陸、東北、北海道と北上。その後、中部、関東方面に帰ってくるという1か月に及ぶ長旅だ。「生で大相撲を見たい」というファンの気持ちは分かるけど、これじゃあ、お相撲さんたちの体が壊れちゃうよ。
案の定、名古屋場所で途中休場した横綱・豊昇龍は巡業を休場。ケガの具合が良くなり次第参加するらしいけど、簡単に治るとは思えない。さらに、先場所休場した人気力士・遠藤や宇良など、のべ12人が不参加というのだから、お客さんから不満の声が出てもしかたがないんじゃないかな?
前から言っているように、地方巡業スタイルは早く見直すべきだ。戦中戦後など食糧難の頃は、一門ごとに地方を回っていた。その後、若貴ブームのときに今のような過密スケジュールになり、巡業地でのチャンコ鍋は廃止に。そしてブームが去ると巡業の数は激減……。
オレらが現役の頃と違うのは、同じ街での連続興行が少なくなったこと。かつては仙台に5日間、札幌に5日間という感じだったから、まだマシだった。今はほぼハネ発ち(1日興行で次の土地に向かう)だから、疲れを取るヒマがない。
昭和とは違って、現代は交通網も発達し、日本のどんな場所からでも、数時間あれば都内に来られる。力士が地方を回るんじゃなくて、東京で巡業風のイベントをやって、ファンに来てもらえばいいんじゃないかな。そうすれば、力士の負担はかなり減るはずだ。