■今季は三冠王を獲るチャンスもあるで!
今季はシーズン前から好調やった。キャンプ中も目が生き生きしてたし、話す態度にも落ち着きがあった。おそらく、自分でも今年はイケるという手応えや自信があったんやろう。
それが3月のドジャースとの試合に出た。サイ・ヤング賞2度のブレーク・スネルの速球を振り抜き、ライトスタンドに叩き込んだ。佐藤のスイングの速さに、メジャー関係者も「エクセレント!」と驚きの声を上げたそうやないか。
勢いそのままシーズンに入り、開幕戦でも試合を決める2ランホーマー。その後も順調にホームランを重ね、前半戦25本塁打。両リーグ1位の数字や。
佐藤は今シーズン、突然、覚醒したわけやない。これまでの4年間の積み重ねが大きく実を結んだ。去年、オカ(岡田彰布)に二軍に落とされたのも、ええ肥やしになったと思うな。
過去4年間との違いを挙げるなら、力任せにバットを振り回さなくなったことや。だから、去年までのホームランはライト方向中心だったけど、今年はセンターやレフト方向へのホームランが増えた。要するに佐藤のパワーとスイングスピードがあれば、無理に引っ張らんでもスタンドに届くちゅうこっちゃ。
フォームも大きくは変わっとらん。インパクトの瞬間に力を、どう伝えるか。そのコツを掴んだはずや。だから、ムダな力を入れずにバットを振り抜き、あらゆる方向に大きな打球を飛ばせている。これまで弱点とされていた高めの真っすぐも、しっかり芯で捉えるようになったしな。
もう一つ、今シーズンは自分が打てるボールを、しっかり見極めとる。去年までは、何でもかんでも振るようなところがあった。
タイトルを獲る上で広い甲子園球場を本拠地とする不利はある。しかし、佐藤の飛距離があれば大丈夫やろう。それとライバルの巨人・岡本とヤクルト・村上のケガによる出遅れも追い風や。岡本と村上には申し訳ないけど、こういう好機はモノにせにゃあかん。
今のところ、高打率の選手もおらんから、三冠王の目も十分あるぞ。
川藤幸三(かわとう・こうぞう)
1949年7月5日、福井県おおい町生まれ。1967年ドラフト9位で阪神タイガース入団(当初は投手登録)。ほどなく外野手に転向し、俊足と“勝負強さ”で頭角を現す。1976年に代打専門へ舵を切り、通算代打サヨナラ安打6本という日本記録を樹立。「代打の神様」「球界の春団治」の異名でファンに愛された。現役19年で1986年に引退後は、阪神OB会長・プロ野球解説者として年間100試合超を現場取材。豪快キャラながら若手への面倒見も良く、球界随一の“人たらし”として今も人望厚い。