■パソコン苦手の理由とは

 また、若者がパソコン操作を苦手とする理由として「経験不足」が挙げられます。学校教育のICT環境は海外に比べて遅れをとっており、日本の多くの学校では、パソコンの授業が月に1度程度。タブレットが配布されても、キーボードやマウス操作の実践機会が足りていません。その結果、就職後に求められる実践的なパソコンスキルを、十分に習得できていない若者が増えているのです。

 逆に、中高年世代は「パソコン」に移行する前に「ワープロ」に触れていたこともあり、そこでタイピングスキルを身につけた人も多くいます。そのため、できない若手を見ると、余計にイライラしてしまうのかもしれません。

「報告書作成やデータ集計など、基本的なビジネススキルの欠如は業務効率に大きく影響し、新入社員のパソコンスキル不足は企業にとって深刻な問題です。大学時代の課題やレポートはおろか、卒論までもスマホで作成していたという人も珍しくありません。最近では、新入社員研修にパソコン基礎講座を組み込み、実践的なスキル習得を促す企業も増加しています。Z世代の特性を理解し、効率的にスキルを身につけられる環境整備が急務となっています」(ある企業の人事担当者)

 かつて“パソコンができない”といえば中高年世代を指していたものですが、今やその構図は逆転。しかし、これは悲観すべきことではありません。Z世代は柔軟な発想力と吸収力に長けており、環境さえ整えば、パソコンスキルも急速に習得できるポテンシャルを持った世代です。スマホに特化したデジタルネイティブだからこそ、その感覚を活かした新しいIT教育や研修メソッドが有効に働くはず。

 必要なのは「できない」ことを責めるのではなく、「できるようになる」ための導線を丁寧に整えること。パソコンスキルを身につけたZ世代が、次代のデジタル社会を力強く牽引していく。そんな未来はそう遠くはないでしょう。

戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。