深夜の原稿執筆作業を編集部で行っていたある日のこと。一休みしようと夜食にカップラーメンの支度をしていると、別添えの液体スープの小袋に書かれていたフレーズが気になった。

〈お召し上がりの直前にお入れください〉

 3~5分で簡単に調理できるのが本来のカップ麺の強み。それなのに、「かやく」と「スープ」を別のタイミングで入れないといけないなんて……。なぜわざわざ調味料を「後入れ」しなければいけないのか。しかも、最近発売されている商品にこのタイプが多い気がする――。

「ああ、めんどくさい! 全部先に入れちゃえ!!」

 そう思いながら、ついつい液体スープをかやくと同時に「先入れ」してしまった。

 出来上がって食べてみたが、まあ普通のカップラーメンだ――と思いきや、よく味わってみると、口の中で形が分かる程度に麺は硬めな気が……。

 正直、見た目に大きな変化はないのに、この一手間で、違いが出るのはなぜなのか……。

 さっそく『日清食品ホールディングス』の広報部にそのワケを尋ねてみた。

「液体スープや香味油、ペーストの大部分を“後入れ”にする理由は、麺の食感やスープの風味を損なわないようにするためです」(日清食品広報部)

 では、大方のカップラーメンの定番スープである粉末スープと、最近増えてきた液体スープの違いは何か?

「一般的に先入れすることの多い粉末スープは、お湯に溶けやすく軽量で、保存性が高いのが特徴なんですが、その一方で、原料を粉末化する際に加熱乾燥するため、風味が損なわれやすく、油や醤油、味噌といった発酵由来の原料の風味を再現するには限界があるんです」(前同)

 そこで、粉末スープには出し切れない「風味の良さ」を再現するために研究を重ね、たどり着いたのが液体スープなのだそう。

「液体スープは、醤油や味噌、だし、油などが持つ本来の風味やコクを忠実に再現できるのが特徴です。ただし、製造時には加熱殺菌、PH・塩分管理などを行い、厳密に微生物の増殖を制御する必要があります」(同)

 液体スープは「後入れ」が基本。先に入れてしまうと、スープの油分や粘度で麺の表面に膜ができるうえ、スープの温度が下がってしまうので、麺にお湯が十分に浸透しないのだとか。

「そうなると、想定した食感を再現できなくなります。また、調理過程で香りが飛んでしまい、素材本来の風味が弱まってしまうんです」(同)