■『ちはやふる』スタートダッシュ失敗の原因は
瑞沢高校のかるた部OB・OG全員集合は確かに豪華だったが、単なるにぎやかし人寄せパンダではなく、その姿でめぐる(當真)に自身の10年後の未来を見せていた。今回だけでなく、次々と映画版のキャストが登場しては現役キャストとちゃんと意味のある絡み方をしており、単なる続編ではなく、新たな物語を作り上げたことは称賛したい。
平均世帯視聴率は初回が5%台と、スタートダッシュでつまずいた。本作の梅園メンバーは天才ではない負け組キャラを揃えたので、インパクトが弱かったのだろう。ただ、回を重ねるごとに成長し、それが視聴者の支持につながった。TVerのお気に入り登録の数字の勢いが中盤以降も衰えずどんどん伸ばしたのは、そのためだろう。
また、序盤のつまづきは競技かるたのルールがわからないなど、とっつきにくい部分もあっただろう。ドラマの世界観を理解できれば、もっとハマる人も多かったはず。そのためにも、放送前に同局『金曜ロードショー(金ロー)』で映画版『ちはやふる』三部作を放送しておくべきだっただろう。X上でも、《新しく観る層にも、これ以上ない導入と、番宣になってたと思う》と指摘する声が少なくない。
本作の放送開始前の『金ロー』を調べると、7月4日が『帰ってきた あぶない刑事』、6月27日が『ルパン三世 カリオストロの城』、20日が『ミッション:インポッシブル(M:I)/デッドレコニング PART ONE』。『ルパン』、『M:I』は映画最新作の絡み、あぶない刑事は24年のヒット映画初出しの3本連続第1弾。『金ロー』にも編成の事情があって、『ちはやふる』三部作の一挙放送は難しかったのだろう。
いよいよ最終回を迎える『ちはやふる-めぐり-』だが、目立たぬながらも名作なのは間違いないと思う。X上では、最終予選について、《梅園とアドレがそれぞれ3対2で勝ったら3校横並びなるじゃん。その場合どうするの?カルタの残った枚数?》などと、勝負の行方を予想する声が熱い。めぐるたちの青春を堪能したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。