■『愛の、がっこう。』は映画『卒業』の逆か
はたして2人はどんな結末を迎えるのか。ヒントは、愛美の役作りについて演出の西谷氏に「『スカボロー・フェア』が流れるようなイメージ」とアドバイスされたという、公式サイトの木村のコメントだ。『スカボロー・フェア』はサイモンとガーファンクルが歌った曲で、兵士の亡霊が旅人に、恋人への実現不可能な伝言を頼むという内容。
この曲が挿入歌として用いられた、1967年のダスティン・ホフマン主演の映画『卒業』は、主人公のベンジャミンが花嫁・エレーンの手を取って結婚式から奪い出し、バスに飛び乗るラストが有名。これを踏まえ『愛の、がっこう。』のラストは、カヲルが愛実を強奪する映画のオマージュになるのだろうか。
気になるのは男女のスタンスだ。『卒業』は、将来に不安を抱えながら、ロビンソン夫人と不倫していたベンジャミンが、夫人の娘で純粋なエレーンを強奪する。愛実とカヲルでは、どちらかというと純粋なのはカヲル。教師として行き詰まっていた愛美が、純粋なカヲルに惹かれるというのは、『卒業』のベンジャミンに立場が似ている。
さらに、『卒業』ではベンジャミンが家を出てアパートを借りていたが、愛実も家を出てマンションを借りている。そうなると『卒業』オマージュのラストはありそうだが、男女の立場が入れ替わって、愛実がカヲルを奪うという、意外なパターンになるかもしれない。
脚本の井上由美子氏はインタビューで、終盤の展開について「深く傷ついた経験があるから深く愛せる。そんな愛実とカヲルの愛しい結末をぜひ見守ってください」とコメントしている。物語は残すところ、あと2回。もうひと波乱ありそうだが、2人の“愛しい結末”は、“幸せな結末”であってほしい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。