■『スティンガース』はお気軽すぎて物足りないか

 実際、番組側も毎回「暑い夏にゆっくり見ませんか」と、気楽に楽しめることをアピールしている。考察を煽るような事件や謎はなく、各キャラクターの背景も描かれず1話完結。週の前半の火曜日の夜、猛暑続きで疲れているときに見るには、うってつけのドラマと言えるだろう。

 ただ、同じような展開とノリがずっと続くと、さすがに飽きてくる。森川葵のキレッキレの演技をはじめ、コメディに徹しているため、恋愛要素やガチなサスペンス要素はなし。また、もともと物語の軸となる本筋がないため、終盤にかけての盛り上がりもない。最終回を前にして、息切れするのも無理はないだろう。

 大規模なロケもなく、明らかにチープさがウリになっている本作は、制作費的には優等生だろう。その一方で、フジテレビ系の秋ドラマは、菅田将暉(32)主演の『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』や草なぎ剛(51)主演の『終幕のロンド ―もう二度と、会えないあなたに―』など、豪華キャストで力の入った作品が並んでいる。

 気楽に楽しめるドラマもいいが、ひょっとすると『スティンガース』は、制作予算などの事情から、秋ドラマへのつなぎで作られたのかと邪推してしまう。

 次回のおとり捜査のターゲットは、中央アジアにある独裁国家の重要人物の命を狙う工作員。警視庁幹部たちの思惑が渦巻く中、ターゲットの襲撃を前提とした超危険なミッションにスティンガースが挑むようだが、いつものお気軽ノリか、重厚な内容になるのか、注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。