■「全員老けたな」に説得力がなさすぎる
『あんぱん』の主要登場人物の年齢設定は、9月12日放送回(1973年)の時点で、のぶ(今田)と嵩(北村)が54歳、蘭子(河合)が52歳、メイコ(原)が50歳。
また、昭和42年(1967年)が舞台の9月5日放送回(第23週)では、のぶが48歳、蘭子が46歳、メイコが44歳だったのだが、彼女たちが、昔馴染みの屋村草吉(阿部サダヲ/55)と再会し、「おまえら、全員老けたな」と言われる場面もあったが――、
《やむおんちゃん「お前ら老けたな」いやいや浅田家の女性たち戦前から全く見た目変わらんけど。リアリティねえなぁ》
《みんな老けないので今何歳くらいなのかよくわからないな》
《のぶは年齢設定のわりに肌が綺麗すぎるし、たかしは年齢設定のわりに手が綺麗すぎる。 あんぱん面白いし、仕方ないけど、気にはなる》
といった、若々しい俳優陣のルックスと役の年齢問題を指摘する声は多い。
「若者に大人気の歌手でもある北村さん、童顔とも言えそうな今田さんと原さんが放つキラキラした存在感は芸能界でも目立つものですよね。そして、大人の女性の雰囲気があると言われる河合さんも肌はツルツル。4人とも綺麗で、演技力も高く素晴らしいキャスティングだったのでしょうが、登場人物の年齢が上がっていく終盤に向かうにつれて、どうしても違和感が出てきている感じですね……」(前出のテレビ誌編集者)
さらにもう1つ、視聴者の間で言われていることが――、
「視聴者が当初に思っていたほど、嵩、つまりやなせさんが作品を生み出す描写がしっかり描かれていない、という指摘が多いようです。『あんぱん』あくまでも主人公はのぶのため、彼女メインで話が進むのは当然ではあるのですが……」(前同)
『アンパンマン』は、やなせさん(嵩)が戦争や人生の積み重ねを経て「逆転しない正義=飢えた人を助けること」という人生哲学を獲得。それが込められた作品として知られる。『あんぱん』でもそれは描かれていて、『アンパンマン』は発売後しばらくは売れなかったことなどにも触れられているのだが、嵩の作品制作における描写は全体的にダイジェスト気味だ。
また、嵩は舞台美術制作や放送作家などを副業的にこなし、史実の「困ったときのやなせさん」に違わぬ活躍をしていたが、これも『あんぱん』では、“無茶ぶりされるもどうにか完成させて評価される”という感じで、クリエイターとして作品に取り組む過程が深く描かれないことが多かった。なので、
《過程、プロセスを見たいのよ!やなせさんの思考の変化・変遷を見たいのよ! やなせさんが何を考えて、どのような物語を描きたいから「オッサンアンパンマン」を「顔食わせるアンパンマン」に変化させたのか?を見たいのよ!》
《肝心な”誕生シーン”でも苦心の過程が描かれてないから「遂に!」とかの感動が全然ないのよ…》
《結局最初からこのアンパンマンありきというか、誕生することはわかってたんです…でもわかってた上で歴史的瞬間に立ち会うのを楽しみに楽しみにしていたのに…どうしてこうなってしまったのか…やはり過程が…過程がないから…》
といった、制作の描写、過程をもっとじっくりと描いて欲しかった、という不満の声は多い。
「主人公や主要人物の生涯を描く朝ドラですから、物語においては、何かを取って何かを捨てることになるわけですが……。
『あんぱん』は、現実では戦後の就職先で出会ったやなせさんと暢さんの関係を“幼少期から交流がある幼馴染”に変えるなど、あくまでも“実話に基づいたフィクション”です。ただ、『あんぱん』は、やはり“国民的ヒーロー・アンパンマンが誕生するまでを描くドラマ”だと感じていた視聴者も多いでしょう。ですので、そこの掘り下げに違和感を感じてしまう人はいるのかもしれませんね」(同)
のぶがほとんど登場せず、嵩が事実上の主人公として描かれていた「戦争編」には好評の声も多かった『あんぱん』。あちらを立てればこちらが立たずという言葉もあるが――。